14.胴塗り

胴塗りとは、竿の竹が露出している部分を塗る事を言います。 従って、一般的には透き漆を使用して、竹の地肌を見せる仕上をします。  塗も刷毛でやる方法と、全て手で拭き上げる方法が有ります。  私は殆ど刷毛で仕上げていますので、今回も刷毛でやって見ますが、初めての時は、手で拭き上げる方が失敗が少ないです。

写真が有りませんが、漆を塗る前の準備に関し述べておきます。
 ①竿全体を、「砥粉」で磨き上げます。砥粉は磨いた後綺麗に拭き落す。
 ②竿全体を湯拭して、表面の汚れや油分を取り去る。
 ③全体を、製作の手引き5章の最後に記した古布ヤスリを使用して、特に節の部分を入念に磨き上げる。
 ④口塗の部分は、色物とか変わり塗で仕上げた場合は、その部分を必要に応じて養生する。

以上事前にやっておく準備事項です。

下の写真工程その1 瀬〆の拭き上げです。

瀬〆漆を手で万遍無く刷り込みます。 上の写真で、竿の下の部分に養生がしてあるのがお分かりでしょうか。この竿は口塗を色漆で仕上げてありますので、胴漆が付かないように養生しました。 これに対し上の方は黒く仕上げているのでそのまま瀬〆を塗っています。 

私は漆に弱いので、かぶれの防止に手袋を付けて塗っています。

続いて塗った瀬〆を綺麗に拭き取ります。 拭き取りに使用している布は「メリンス」と言う生地です。 布地のスペックは分りませんが、昔和服の裏地に使用していた様です。 色々な生地で拭き取りを試してみましたが、メリンスがベストでした。 但し、最近は手に入りにくくなっています。(当店には多少在庫有ります) 代用に化繊の紙で出来たものが売られています。 もちろん高いですが正絹ならOKです。 

拭き取る時、特に節の部分や花道は漆が溜まり易く、拭き残しが出やすいので注意してください。 拭き残しが出るとその部分が黒く残って、斑になってしまいますので。 

一回塗った漆を拭き取るなんて、バカなことをしていると思うかもしれませんが、これが拭き漆と言う漆塗りの技法のひとつで、ごく薄く塗るための技術です。 

拭き終わったら室に入れます。

 

上の写真は翌日に室から出したものです。 漆の塗ってない竹に比べて色が少し濃くなっているのが判ると思います。 瀬〆の拭き漆は1回でOKですが、このまま出来れば2・3日置いてから次の工程に移ってください。

 

次の工程は、刷毛で透き漆を全体に薄く、万遍無く塗って行きます。 この時に使用する漆は、透き漆であれば何でも良いと思います。 (透き漆によって多少仕上がりの色に差が出ます。) 私は主に梨子地に少し生正味を混ぜて使用しています。 漆は通常の口塗で使用するより少し薄めたものを使用します。 全体に万遍無く薄く塗って行くためです。 少量漆を付けて刷毛で伸ばしながら、薄く・薄く塗って行きます。 

刷毛での仕上げは、多少の熟練技術が必要です。(漆の濃度・塗り方等々技術的に微妙な所が有ります) 漆を万遍無く伸ばさないと斑になりますし、薄め過ぎると漆が流れ、こちらも斑の原因となります。 漆の厄介な所は塗っている時に万遍無く塗れているかどうかわからない事です。 室に入れて乾いて初めて斑が見えてくることです。 いきなりやると十中八九は失敗すると思いますので、必ず何回か練習してから本番に移ることをお勧めします。 

刷毛でなく全て拭き漆で仕上げる時は、2回目以降は全て生正味漆を使用して拭き上げます。 2回・3回・・・・と、目的の色が出るまで塗って行きます。 初めての方はこちらの仕上方が失敗なく絶対にお勧めです。

 

上の写真は、一番下は瀬〆を塗った後、更には刷毛塗で透き漆を1回・2回と塗って行った順に上に行きます。 この竿は3回塗った所で、目的の色になりましたのでここで止めました。 

さらに仕上をしていきますが、この時点で色漆の部分の養生を外し全体を生正味で仕上げていきます。 

 

最初の瀬〆の時と同様今回は生正味を使用して全体を最終拭き上げします。 この時色物の口塗部分にも漆を塗って拭き上げます。 もちろんその都度室に入れて固めます。 今回は生正味3回で目的の色になりましたのでそこで終了です。 この状態で2日ほど養生してから最後の仕上げです。 

全体をコンパウンドを使用して磨き上げて光沢を出します。 コンパウンドは色々市販されていますので試してみて下さい。 私は車を磨く鏡面仕上げのコンパウンド等3種類を使い分けています。

これで胴塗りの完了です。