16.覆輪

この章は最後の仕上げ覆輪引きです。 覆輪の良し悪しで竿の印象は大きく変わりますので頑張って下さい。

最初に覆輪筆を作ります。 使用する糸は、しつけ糸の細い物もしくは#50の絹糸です。 

絹糸を使用する時は、絹糸は3本の細い糸を縒って1本にしています。 従ってその縒りを戻し、細い1本を取り出して使用します。

 

糸の準備が出来たら、写真の様に適当な長さに糸を引きちぎります。 

引きちぎるという行為が重要で、決して刃物を使用して切ってはいけません。

引きちぎる事により、上の写真の様に切断部がササクレた様な切断面になります。 

糸の先端は引きちぎった事により、筆の様に先端肉程に細くなっています。 この先端の細い1本が重要です。 

糸を直接手に持て引く人もいますが、私は下の写真の様に、

箸の先にテープで張り付け、覆輪筆を作り使用しています。

 

この糸にたっぷり漆を含ませます。

そして、紙で拭き取ります。

この行為を2・3回行い、糸に漆が浸み込みやすい状況を作っておきます。

竿を安定した状態に置きます。 下の写真では両サイドが外れてしまっていますが、この部分に私はY字の木を両サイドに置きその上に竿を載せて安定した状態にしています。

糸に漆を含ませて、覆輪を引く部分に持って行きます。そして先ほど説明した、糸を引きちぎった時に出る糸の最先端の細い部分を、竿の狙った位置に当て貼り付けます。 

この時窓は閉め、エアコンを止めて、息を止めて行います。 

先端位置が決まったら少しだけ糸を送り、竿をゆっくり回しながら線を引いていきます。 

覆輪引きには練習が必要です。 出来るだけ細い線が美しいと私は思っています。 

人によっては、最初に糸を1周ぐるりと巻きつけてから引く人もいますが、これですとどうしても線が太くなってしまいます。 あくまで先端を使用して細い線を引くよう練習して下さい。 

失敗したら躊躇せずにその場で拭き取ってやり直すこと、これも肝心です。

覆輪引きの完了です。 

糸に漆を付け過ぎると、漆が溜まって一部が太くなってしいますので注意してください。 

どの位置に何本引くかは各自の好みです。 色々試してみて下さい。

以上で和竿作りはほぼ完了です。